2012年12月05日

堆積岩地帯ウェルド

ロンドンの南にあって、南北ダウンの間に位置する堆積岩の丘陵地帯をウェルド(Weald)という。ウェルドの語源は森林である。鉄道が通るまでは深い森に覆われ、土地の人はロンドンの人間が聞き取れないほどのきついなまりの言葉を話していたそうだ。
 
ウェルドの最高点Lieth Hillから南東のガトウィック空港のほうを見たところ。なだらかな丘陵地帯だが、イギリスにしては森林の比率が高い。
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堆積岩の上にできる土壌は酸性になり、南北ダウン(石灰岩の丘陵地帯、ダウンランド)のアルカリ性土壌と対照的である。ダウンランドでは二次林でサンザシやセイヨウネズが優占するが、ウェルドの二次林ではカバノキ(幹が白い)が優占する。幹が赤いのは野生化したヨーロッパアカマツ。林床にはワラビが生えている。Lieth Hillにて。
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 極相林は、ダウンランドではブナ林になるが、ウェルドではナラが目立つ。
 
ウェルドには酸性土壌を好むツツジ科の樹種が多い。ダウンランドではこれらを見たことがない。
ヒースの優占種ヘザーが造林地(Lieth Hillの東)の伐採跡に咲いていた。イメージ 3
 
スノキ属2種。Lieth Hillにて。
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シャクナゲ。南欧~西アジア原産のRhododendron ponticumだと思う。野生化してこのように密生し自生植物を圧迫するので問題になっている。落葉樹二次林の林床に一面に生えていることがある。Wakehurst Placeの東にて。
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ラベル:ヨーロッパ
posted by なまはんか at 07:47| イギリスの自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月26日

ワイタムの森

世界で一番研究されている森林と言われているのが、オックスフォード大学が所有するワイタムの森である(Wytham Woods, http://www.wytham.ox.ac.uk/index.php)。
日本でもオックスフォード大学の動物生態学者エルトンの調査地として有名。オクスフォードの町から車で15分程度。バスの便はなく、オックスフォードの町との間にハイウェイがあるので歩いて行くこともできない。車でないと行くのは難しい。なお、入林には事前に申請が必要。書類を書いて郵送すればよい。一般市民の散策目的であっても許可はもらえる。
 
森の入り口の案内板。牧場とテムズ川に囲まれた島状の孤立林である。白地の部分は牧場や集落。森の中にも牧場がある。面積は390ヘクタール。2km四方が400ヘクタールなので、それよりちょっと小さい。意外に小さいのに拍子抜けした。日本の大学演習林はもっと大きいのが普通。ただ、孤立林ではあっても、西方のコッツウォルズ丘陵へと連続する田園地帯の東端であり、景観レベルでは野生生物の住み場所として十分機能しているようだ。イメージ 1
 
たまにナラとブナの大きな木があるが、二次林であろう。
ナラ。
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ブナ。
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若い二次林。手前の葉が大きい低木は、クリ(Sweet chestnut, Castanea sative)のひこ生え。2年前に伐採したところ。かつては牧場の柵の材料にするため20年程度の周期で伐採していた、などと手前の看板に書かれていた。
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こんなふうに羊がいる。鉄条網のフェンスで森には入らないようにしてある。
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テムズ川の向こうにオックスフォードの町が見える。
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ラベル:ヨーロッパ
posted by なまはんか at 06:39| イギリスの自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年11月20日

コッツウォルズ北部

コッツウォルズの北部では、石灰岩が褐色を帯び、蜂蜜色と呼ばれる色合いになる。褐色になる理由は石灰岩中の鉄分が酸化するためと思われるので、北部のほうが鉄分含量が多いのであろう。
 
チェルトナムの20kmほど北西にある町ブロードウェイの建物。
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ブロードウェイはコッツウォルズ丘陵の北西麓にあり、すぐ上の丘陵の縁にはブロードウェイタワーという展望台がある。
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ブロードウェイタワーのある丘(Broadway Hill)は、コッツウォルズでCleeve Hillに次ぐ高さである(312m)。Cleeve Hillと同様、コッツウォルズ丘陵の北西端にあたり、眼下には平野が広がる。 ブロードウェイタワーも蜂蜜色だが、石灰岩ではなく他所から運んできた砂岩でできているらしい。
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ブロードウェイタワーからブロードウェイの町を見下ろしたところ。タワーの高さは17mなので、Cleeve Hill(330m)とほぼ同じ高さである。
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ブロードウェイの5km東にはチッピングカムデンという街がある。こちらは丘陵上の谷間に位置する。
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チッピングカムデンの蜂蜜色の建物。
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チッピングカムデンとブロードウェイの間にあるDover's Hill。やはりコッツウォルズの北西縁にあたる。
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『地球の歩き方』によると、「北東部ではハチミツ色をしたこのライムストーンは、中部では黄金色となり、さらに南西に下るに従って真珠のような柔らかい白色へと変化してゆく」とのこと。しかし、私が行った町では中部(チェルトナム、バイブリー、サイレンセスター)と南部(カールスクーム)は白っぽいが、北部(ウィンチクーム、ブロードウェイ、チッピングカムデン、モートンインマーシュ、チッピングノートン)に行くと突然ハチミツ色になるように思われた。特に、チェルトナムで白かった建物が、その10km北東のウィンチクームに行くと急に蜂蜜色になるように感じられた。石切り場はそんなにたくさんあるわけではないので、どの石切り場で採れた石を使っているかによって、建物の色が地理的に不連続に変化していてたとしてもおかしくはない。
 
ラベル:ヨーロッパ
posted by なまはんか at 06:31| イギリスの自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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