2014年03月28日

ヤマアイ

イングランド南部の石灰岩地(アルカリ性土壌)の発達した森林では、高木層でヨーロッパブナが優占することが多い。
林床では、しばしばDog's mercury (Mercularis perennis)が優占する。日本のヤマアイと同属。
トウダイグサ科の多年生草本である。ヤマアイ属はすべて雌雄異株のようだ(日本の野生植物)。
 
やはり石灰岩地に分布が限定されるツゲと一緒にブナ林に生えている様子はこちら。 
 
こちらは未固結石灰岩(チョーク)上のハシバミの萌芽再生林。林床にヤマアイが群生している。中央の低木はやはり石灰岩植物のツゲ。Princes of Risboroughにて。
イメージ 2
 
メス個体。 写真をとったのは7月。もう花はほとんど終わっていたため、オス個体は見かけなかった。
イメージ 1
 
雌花。3数性なのが、トウダイグサ科っぽい。
イメージ 3
 
ヤマアイ属はユーラシアに分布し、ヨーロッパに種が多い。日本を含むアジアにはヤマアイ1種が分布する。日本でも石灰岩地に多いらしい。
 
Dog's mercuryのmercuryは水銀だが、学名からきたのか、学名が後付けなのかわからない。
この植物が毒を持つことと関係していそうだが、Wikipeidaには人名(イタリア人のGirolamo Mercuriale)にちなんだ学名と書いてある。
図鑑を見ると日本のヤマアイは染料につかわれたことは書いてあっても、有毒であるとは書かれていない。
 
dogは"false" or "bad"を意味するらしい。日本語のイヌと同義であるが、偶然なのかどうか。
 『新明解国語辞典』では、造語成分としての「イヌ―」には以下のような意味だと説明されている。
役に立つ植物の何かに形態上は似ているが、多くは人間生活に直接有用ではないものであることを表す。にせ。「―タデ」
このような「イヌ―」の用例は日本古来からあるのだろうか。それとも英語のdogの翻訳であり、明治以降に新たに作られた表現なのだろうか?
『例解古語辞典』には以下のような説明がある。
「いぬ」には接頭語としての用法もある。似て非なるものの意味を表す。植物名によくみられる「犬桜」「犬槙」「犬黄楊」「犬蓼」「犬辛夷(こぶし)」の類はこれである。
ネット上では「否(いな)」に由来するとの説明が多いが、誤りだろう。
ラベル:ヨーロッパ
posted by なまはんか at 21:41| イギリスの自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月27日

チョークランドの台地上の土壌

イングランドの南東部、ロンドン平野(London Basin)を取り囲むように分布する未固結の石灰岩(チョーク)からなる丘陵地帯(チルターン、南北ダウンなど)を、地形学・生態学的にはダウンランドといい、地質学的にはチョークランドという。
 
チルターンやノースダウンでは、チョークランドの地形は傾斜台地(Cuesta)となっていて、台地上は緩やかな傾斜の平坦面となっている。緩やかな傾斜といっても、ロンドン盆地に向かって50kmぐらいかけて徐々に下っていくという意味なので、台地上に立って周囲を見渡す程度の数100mのスケールではほぼ真っ平らである。そういう平らな台地上にはチョークからできたとは思えない酸性の土壌があり、そのもとになっている堆積物はしばしばClay-with-flintsと呼ばれる。
 
下はチルターン最高点のあるWendover Woodsの台地上平坦面。
イメージ 1
 
調べてみると、Clay-with-flintsの起源はいまだによくわかっていないらしい。現代地質学の父ライエルの母国イギリスの首都のすぐ近くの地質だというのに驚きである。Clay-with-flintsは狭義にはチョークのすぐ上にあるフリントに富む地質を指し、さらにその上にあるフリントの含量が少ない最表層の堆積物はPlateau Driftと呼ぶ。なので、チョークランドの台地上の土壌の基質は厳密にはPlateau Driftである。
 
これまでの研究によると、Plateau Driftは極めて多様な起源・年代の堆積物(チョーク、レスなど)を含み、一番古いものではPaleocene(5700~6500万年前)のReading Bedsという淡水湿地起源の堆積物がある。 ということは、チョークランドの台地上の地形はこのころから平坦なままで、少なくとも一部の堆積物は横方向に移動することなく台地上にとどまり続けたということになる(Jones, D.K.C. 1999, Geological Society pf London, Special Publication)。
  
だからといって、チョークランドの台地上の土壌の年齢が5000万年以上たっていると言えるのか、というとそう簡単な話ではない。5000万年たてば、台地は全体的に浸食されている。5000万年前から残っているのはあくまで土壌のごく一部であり、土壌の大部分は下のチョークや風によって運ばれたレスなどの新たに供給された母材から形成されたことになる。
 
Jennyの土壌生成因子のひとつに時間がある。土壌の性質が生成開始からの時間によって影響されるのは明らかだが、浸食のスピードが土壌生成のスピードを上回ると土壌は生成されず母材のままになるだろう。土壌生成開始から同じ1万年がたったとしても、土壌侵食の速度が速い急斜面の土壌は、土壌侵食速度が遅い平坦面の土壌に比べて相対的に若くなるはずである。なので、時間の影響は浸食のスピードをさしひいて考える必要があり、土壌基質の絶対的な年代にはあまり意味はないのだろう。
posted by なまはんか at 03:06| イギリスの自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月05日

堆積岩地帯ウェルド

ロンドンの南にあって、南北ダウンの間に位置する堆積岩の丘陵地帯をウェルド(Weald)という。ウェルドの語源は森林である。鉄道が通るまでは深い森に覆われ、土地の人はロンドンの人間が聞き取れないほどのきついなまりの言葉を話していたそうだ。
 
ウェルドの最高点Lieth Hillから南東のガトウィック空港のほうを見たところ。なだらかな丘陵地帯だが、イギリスにしては森林の比率が高い。
イメージ 1
 
堆積岩の上にできる土壌は酸性になり、南北ダウン(石灰岩の丘陵地帯、ダウンランド)のアルカリ性土壌と対照的である。ダウンランドでは二次林でサンザシやセイヨウネズが優占するが、ウェルドの二次林ではカバノキ(幹が白い)が優占する。幹が赤いのは野生化したヨーロッパアカマツ。林床にはワラビが生えている。Lieth Hillにて。
イメージ 2
 極相林は、ダウンランドではブナ林になるが、ウェルドではナラが目立つ。
 
ウェルドには酸性土壌を好むツツジ科の樹種が多い。ダウンランドではこれらを見たことがない。
ヒースの優占種ヘザーが造林地(Lieth Hillの東)の伐採跡に咲いていた。イメージ 3
 
スノキ属2種。Lieth Hillにて。
イメージ 4
 
シャクナゲ。南欧~西アジア原産のRhododendron ponticumだと思う。野生化してこのように密生し自生植物を圧迫するので問題になっている。落葉樹二次林の林床に一面に生えていることがある。Wakehurst Placeの東にて。
イメージ 5
 
ラベル:ヨーロッパ
posted by なまはんか at 07:47| イギリスの自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。