2012年07月19日

イギリスの天気

7月も半ばをすぎたのに、気温が20度に達しない日が続いている。町ではいまだにコートを着ている人がいる。今年は記録的な冷夏らしい。4-6月の降水量は観測史上最多だったらしいが、その傾向がまだ続いていて、雨が多い。ニュースによると、例年にくらべジェット気流が南側を流れ、ちょうどイングランドの上空にあるのが原因らしい。今週末になると、ジェット気流が北上し、気温も20度を超えてようやく夏らしい天気になるそうだ。残念ながら今週末に一時帰国するので、イギリスの夏らしい夏を経験することはできなさそうだ。
 
そういうわけで、今年は異常な年なのだが、イギリスの「1日の中に四季がある」という気候はわかる気がする。雨が多いといっても、日本の梅雨のように1日中降り続けるということはない。降った思うとすぐやんで、一瞬日が差したりする。山の天気のようだ。海洋性気候なのがその原因だろう。水蒸気の発生源である大西洋から、水蒸気がほぼ飽和した空気が偏西風でどんどん運ばれてくるので、雨が降りやすいのだろう。ただ、日本ほど気温が高くないので、空気が含む水蒸気量も少なく、一度に降る降水量は多くないのだろう。
山の場合は、上昇気流で運ばれてくる空気が断熱膨張によって冷たくなり、水蒸気が飽和して雲を生じるので雨が降りやすい。そう考えるとイギリスの気候が山の気候のようであるのもうなずける。
 
Kew Greenの上の典型的な空模様。いつも雲が多いです。そして、ヒースロー空港への通り道なので飛行機も多いです。
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天気予報の画像を見るとイギリスの上空で降雨の範囲がまだらに発生しては消える様子が見て取れる。このようにイギリスの降雨はふつう「にわか雨shower」であり、天気予報ではshowerという言葉が頻繁に出てくる。日本のような前線にともなう帯状の降雨もあることはあり、これはband of rainと呼ばれるのだが、それは降雨の原因としては決して主要ではない。なので、天気予報では、降雨に相当する言葉としてはrainよりもshowerのほうが圧倒的によく使われる。また、晴vs雨ではなく、dryまたはwetという言葉を使うのが印象的。今年は例外的にwetなので、ニュースや新聞で見かけるのはsoggyという表現。
 
イギリスの気象庁にあたるMet Officeのウェブページによると、2012年6月の概況は次のとおり。イギリスでは温度の単位に摂氏を使うので日本人にもわかりやすい。アメリカは華氏だった。日射量が少ない天気のことを表すのにdullという表現を使っている。
 
The UK mean temperature was 0.3 °C below the 1971-2000 average and it was the coolest June since 1991. Daily maximum temperatures were well below normal, particularly in many central and eastern areas, with few warm days. Almost all areas were much wetter than normal, especially across much of England and Wales, southern and eastern Scotland and Northern Ireland. It was the wettest June across the UK in the series from 1910 (wetter than June 2007), and the equal-wettest June in the England and Wales series from 1766 (shared with June 1860). Only the far north-west of Scotland was drier than normal. Almost all areas were duller than usual, and it was provisionally the second dullest June in the series from 1929. The far north-west of Scotland was the sunnier exception.
ラベル:気象学
posted by なまはんか at 16:12| ロンドン生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年07月01日

ロンドンの水

イギリスでは、民間の会社が水道水を供給しているらしい。ロンドン(テムズ川流域)では、Thames Water Utiliitesという会社である。この会社はなんと900万人に水を供給しているらしい。会社のホームページによると、以下のように水道水の水源のうち、35%が地下水で、65%が河川である(http://www.thameswater.co.uk/cps/rde/xchg/corp/hs.xsl/15734.htm)。しかし、河川水のほとんどは元をたどると地下水であるため、結局は地下水にほとんど依存していることになる。
 
We supply 2.6 billion litres of drinking water to nine million people across London and the Thames Valley every day. Thirty-five per cent of the water we supply is pumped from natural underground reservoirs called aquifers. The other 65 per cent is pumped from rivers. However, the vast majority of river water is supplied from aquifers, making groundwater our most important source of water. For water to reach the aquifer, the ground needs to be saturated so it soaks through to the rocks beneath. As a result, winter is the most important time for replenishing supplies
 
というわけで、ロンドンの水道水は地下水の水質を反映し、ということは地質を反映していることになる。ロンドンの水はミネラルが多い硬水である。テムズ川流域には、石灰岩が多く分布するため(後述)、特にカルシウム濃度が高い。水道水を加熱すると、溶けているカルシウムが固体として析出してくる(lime scaleという)。カルシウムがヒーターやセントラルヒーティングの管の内部にこびりつき、加熱効率が低下したりして問題になるらしい。また、人によっては美容・健康上にも問題が生じるらしい。というような説明が下の店のショーウィンドーで説明されていた。石灰岩でできたロンドン北西部の丘陵地帯Chiltern Hillsのふもと、Princes Risborough(プリンシスリスバラ)にて。
 
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ふだん生活して感じるのは、電気ポットの中にカルシウムの塊がたまること、水がかかるシンク周辺にカルシウムの粉がこびりつくこと、パスタをゆでるとなべのお湯がドロドロになること、などである。日本でも、やかんの中や水周りにカルシウムがつくことは経験していたが、スパゲティをゆでるお湯がここまでドロドロになることはなかったので驚いた。
 
地質について詳しく見るとブリテン島の南東部(ヨーク・ノッティンガム・バーミンガム・ブリストル・エクセターを結んだ線より南東側)の基盤はジュラ紀から白亜紀にかけて浅い海で形成された石灰岩である。テムズ川の河谷はその石灰岩が沈降した上にたまった未固結の堆積物で埋まっているが、その堆積物の多くも石灰岩起源である。ブリテン島のそれ以外の地域には石灰岩はほとんど分布せず、古い堆積岩やそれが変化した変成岩(スコットランドの北西部の変成岩はなんと28億年以上前に起源)からなるので、水道水もミネラルの少ない軟水のはずである。
ラベル:ヨーロッパ
posted by なまはんか at 12:16| ロンドン生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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