2012年04月10日

中国雲南省熱帯山地の土地利用

中国雲南省の山地では、焼畑が伝統的な生業であった。現在は焼畑が衰退し、常畑への転換が行われつつある転換期だと思われた。
 
雲南省南部のシーサンバンナでは、標高1000m以下の山地は天然ゴムのプランテーションにほとんど置き換わってしまった。州都景洪Jinghongからその東の植物園へ、そして植物園から南東部のMenglaへと、それぞれ途中1000m程度の山地帯を越えて高速道路が通じている。その道中は延々とまだ若い天然ゴムのプランテーションが続く。ボルネオ・サバ州東部(テルピッド~サンダカン~タワウ)のアブラヤシのプランテーションに匹敵する規模である。
 
Menglaから植物園へ戻る途中の車窓から撮った写真。乾季のため、焼畑の煙で空気がかすんでおり、見渡す限りゴムという写真は撮れなかった。斜面の上部のゴムの木は大きく、斜面下部の木は小さい。斜面下部には森林が残存しているところを見ると、斜面上部から下部に向かって土地利用の転換(焼畑からゴム畑への)が進んだのではないかと思われる。
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標高1000m以上だと、寒すぎるため天然ゴムは育たない。そのような高地では茶のプランテーションが優占する。雲南省南部はプーアル茶の産地。プーアルとは雲南省南部の地名である。
 
ミャンマー国境近くのMengsongの景観(標高1700m)。国境の山々には原生的な森林が残る。手前はかつては焼畑が行われていた里山であろう。現在は常畑へと転換されている。手前の低木や奥の赤土の見える斜面が茶畑。奥の針葉樹の木立はCunninghamiaの造林地。手前の茶の奥に見えるやや高い木はクリやクルミである。
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茶に混じってシナグリ(Castanea mollissima)が植えられていた。中国名は板栗。Wikipediaによると:ニホングリのように渋皮がタンニンによって食用部分に密着しないので、煎ったものを手や器具で剥いて食べるのが容易である。中国大陸産のシナグリは一般には天津港が伝統的な海外出荷拠点であったため、天津栗または天津甘栗、甘栗の名で日本に輸入されている。
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こちらはセイヨウグルミ。Juglans regia。中国名は核桃。ヨーロッパ西部からアジア東部が原産と言われる。4世紀ごろにシルクロードを経て中国に伝わった。日本にも17~18世紀に伝わり、この系統はテウチグルミ(Juglans regia var. orientalis)、一般的には「在来種」と呼ばれる。20世紀以降の日本には、アメリカから別系統のセイヨウグルミ(ペルシャグミ)が入り、それとの交雑により大粒の品種が選抜されてきた。
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ラベル:アジア
posted by なまはんか at 02:14| 中国雲南省・台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月04日

中国雲南省の熱帯山地林

シーサンバンナ州の一番南西部、ミャンマーとの国境地帯に位置するMengsongの熱帯山地林を見に行った。斜面下部には熱帯山地多雨林が、尾根には熱帯山地常緑広葉樹林が分布する。熱帯山地多雨林は種多様性が高く、林冠は35m以上あり、優占種がはっきりしない。熱帯山地常緑広葉樹林は種多様性が低く、林冠は30m以下、優占種はブナ科のCastanopsisとLithocarpus、もしくはツバキ科のSchima wallichiiである。この2種類の熱帯山地林はもちろん連続的に変異するので明瞭に区別できるとは限らない。たとえば、インドネシアのジャワ島の熱帯山地林は林冠は35m以上あるが、優占種ははっきりしていて、ブナ科のCastanopsisとツバキ科のSchima wallichiiであり、ちょうど両者の中間的である。
 
これが熱帯山地多雨林と思われる。斜面下部に位置し、樹高が高い。植物を観察する時間はなかったが、文献によると、優占度が高い種はミズキ科のMastixia、クスノキ科のPhoebe、モクレン科のParachmeria、トウダイグサ科のGymnanthesなど。標高約1700m。
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熱帯山地多雨林を外から見たところ。斜面下部の樹冠が大きい部分。尾根は樹冠が小さいので、熱帯山地常緑広葉樹林であろう。手前は火入れの跡。伝統的な焼畑はおそらくもう行われておらず、下に見える茶畑のような常畑にするための準備であろう。
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こちらが尾根の熱帯山地常緑広葉樹林。標高は上の熱帯山地多雨林とほとんど同じ。標高1000m以上だと、標高よりも地形の影響が大きい。たとえ標高が低くても尾根には熱帯山地常緑広葉樹林が成立するし、標高が高くても谷には熱帯山地多雨林が成立する。中央の木はCastanopsis。優占種といっても、日本の照葉樹林のシイほどの優占度はない。
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熱帯山地常緑広葉樹林を外から見たところ。個々の樹冠が小さく、林冠がのっぺりしていて日本の照葉樹林に似る。
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 上の森林の林床でみかけた稚樹。上と同種かどうかはわからないが、Castanopsisの稚樹だと思う。
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これはMengsongに行く途中の標高1100mの曼傘村(布朗プーラン族の集落)付近でみかけたCastanopsisの親木。花序が直立する虫媒花。ブナ科のうち、Castanopsis、Castanea、Lithocarpus、Trigonobalanus verticellataがこのような花序をつける。いっぽう、Quercus、Fagus、Trigonobalanus doichangensis、Nothofagus(最近はナンキョクブナ科として独立させる)の花序は下垂する風媒花。
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葉の裏が銀色のところは日本のシイに似る。
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ラベル:生物学
posted by なまはんか at 22:25| 中国雲南省・台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

中国雲南省のフタバガキ林

雲南省の熱帯季節性雨林のうち、南東部のMenglaにはフタバガキ科のShorea wantianshuea(=Parashorea chinensis)が優占する森林がある。最上層を占めるShorea wantianshueaの樹高は60mに達し、森林の相観はボルネオのフタバガキ林とほとんど変わらない。ただし、ボルネオだと直径2m近い木が散見されるが、この森林にはそこまで太い木は見当たらなかった。
 
シーサンバンナ植物園はこの森林に20ヘクタール調査区を設定している。これが調査区の内部。奥に見える大木がShorea wantianshuea。下層が鬱閉していて森林の上層は見通せない。
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 20ヘクタールに直径1cm以上の樹木が約10万本あり、468種が出現。直径10cm以上1ヘクタールあたりだと平均123.5種(110~139種)が出現する。ボルネオのランビル(247種)やマレー半島パソー(206種)のフタバガキ林やアマゾンのヤスニ(251種)よりは少ないが、パナマのBCI(91種)やタイのHKK(65種)にくらべると多い。

調査区の近くには観光用のキャノピー・ウォークウェイがある。中国語では「樹冠走廊」とか「空中走廊」というようだ。もともとは研究用に作ったのだが、維持費が出せなくなり観光用になってしまったらしい。ウォークウェイの入場料は100元なので相当いい値段(今回滞在したホテルが1泊120元)。Shoreaは常緑だが、その他の超出木には落葉樹もある。Tetrameles nudiflora(ダティスカ科もしくはテトレメレス科)やAntiaris toxicariana(クワ科)であろう。Tetramelesは「義務的」(obligate)な落葉樹で東南アジアのうち季節性のあるインドシナと東マレシア(ジャワ・スラウェシ・小スンダ列島・ニューギニア)に分布し、年中湿潤なボルネオ・スマトラの大部分・マレー半島南部には分布しない。一方、Anitiarisは「任意的」(facultative)な落葉樹で、雲南では落葉性だがボルネオでは常緑性である。
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かなりの高度感。
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Shoreaを下から見上げるこんな感じ。確かに60mあるかもしれない。中国で一番高くなる木で、中国名は「望天樹」。
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こちらがshoreaの大木の葉。
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こちらがShoreaの稚樹のシュート。托葉が目立つ。枝や葉の雰囲気は、ボルネオのParashoreaよりはShoreaっぽい。雲南省と広西壮族自治区、および北ベトナムに分布する。
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ラベル:生物学
posted by なまはんか at 20:58| 中国雲南省・台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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