2010年10月12日

レッドウッド林

北部カリフォルニアの海岸部と海岸山地内陸部の渓谷沿いにレッドウッド(Redwood、Sequoia sempervirens)が優占する林分がある。Coast redwoodとも呼ばれるとおり、レッドウッドの分布は太平洋岸から60km以内に限られる。レッドウッドの生育には、一年をとおしてかなりの水分が必要とされる。夏に雨がほとんど降らない地中海性気候なのにレッドウッドが生育できるのは、太平洋上で発生する霧によって水分が供給されるためである。ある程度内陸部でも、川沿いは土壌が乾燥しにくい上に、谷に沿って霧が上昇してくるため、レッドウッド林が成立する。レッドウッドの分布南限はサンフランシスコの南約200km(北緯35度50分)で、サンフランシスコのすぐ北にもある程度まとまった林分がある(Muir Woods)。しかし、これら南側のレッドウッド林では樹高が100mを越えることはない。樹高が100mを越すのは、Montgomery Wood(北緯39度10分)以北、特に北緯40~42度の間である。レッドウッドの北限はカリフォルニア・オレゴン州境(北緯42度ちょうど)から約10km北だが、これら最北部には最近になって進出してきたと考えられており、オレゴン州では大木は見つかっていない。
 
レッドウッドが高さ100m以上になる北緯39度以北でも、北緯40~41度にある森林(Humboldt Redwoods State Park)と北緯41~42度にある森林(Redwood National ParkやJedediah Smith Redwoods State Park)では、下層植生に違いがある。前者では地表を這うように生えるカタバミが優占するが、後者ではシダ類が人の背丈ほどにもなって密生する。後者のほうが木に着生するコケの量が多く、より「温帯多雨林」的様相を呈する。北に行くほど降水量が多いためであろう(気温はほとんど変わらない)。
 
Eureka (北緯40度50分、標高13m)
 JanFebMarAprMayJunJulAugSepOctNovDecYear
T8.89.69.610.111.51313.814.31412.610.99.111.5
R152.4120.1135.173.136.512.93.312.122.667.8163.5153.4953.2
 
Crescent City (北緯41度45分、標高12m)
 JanFebMarAprMayJunJulAugSepOctNovDecYear
T8.69.39.410.111.713.514.51514.71310.68.811.6
R250.9212.3226.8116.874.633.79.924.344.4123.1269.4269.41656.3
 
こちらが、Humboldt Redwoods State ParkのRockefeller Forest(北緯40度20分)。このように林床植生は背の低いカタバミがほとんど。左のレッドウッドの大木の根元からは細い萌芽幹が多数出ている。
イメージ 2
 
こちらが、Jedediah Smith Redwoods State ParkのStout Grove(北緯41度50分)。真ん中は歩道で裸地になっているが、それ以外はシダでびっしり。
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以上の2つは、川沿いの平らな沖積地上の林分。降水量の違いに応じて、林床植生は大きく異なるが、低木がほとんど存在しない点は共通している。ときおり起きる洪水や山火事が低木を排除しているのだろう。どちらの影響が強いかは、山火事と洪水の起きる間隔しだいだと思われる。次の例を見ると、おそらく洪水のほうが頻繁に起こる出来事で、低木の定着を妨げる主要因ではないかと思われる。
 
こちらは、Redwood National ParkのLady Bird Johnson Grove(北緯41度20分)。川からちょっと離れた段丘上の林分なので洪水の影響はないだろう。シャクナゲ、Tanoak(Lithocarpus densiflorus)、Vacciniumなどの低木が多い。この場所でも山火事が起きた形跡はあるので、洪水が起きないことのほうが、低木層の発達には重要なのかもしれない。そういえば、さらに南のJug Handle(北緯39度20分)の段丘2段目のレッドウッド林(二次林)や、小さい谷間(つまり、洪水は起こりそうもない)のMuir Woods(北緯37度55分)でも低木層がそこそこ発達していた。
イメージ 3
 
Rockefeller Forestのすぐ近くのFounders Groveで、昔の洪水でどこまで水が来たか示してあった(Humboldt Redwoods State Park、北緯40度20分)。ここまですごいのは50~100年に一度だろうが、もっと小規模なのは毎年のように起こるのではないだろうか(https://vegetation.seesaa.net/article/a780851.html)。
イメージ 4
 
なお、Humboldt Redwoods State Parkの100m越えのレッドウッドの写真はこちら(https://vegetation.seesaa.net/article/a4857947.html)。
ラベル:生物学
posted by なまはんか at 02:27| Comment(0) | カリフォルニアの植生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月30日

夏季落葉性

カリフォルニアには夏季落葉性(summer deciduous)の低木、California buckeye(Aesculus californica)がある。トチノキ属は、世界に約15種あり、日本のトチノキを含めてその多くは冬季落葉性の高木であるが、常緑性の種もあるらしい。落葉性と常緑性の進化を考える上で興味ふかい属である。
 
フレズノからヨセミテに向かう途中のGray pineが優占するウッドランドの中に生えている。
イメージ 1
 
たわわに実っている実は確かに栃の実そっくり。
イメージ 2
 
よく見ると実のついた枝の先端の葉だけかろうじて緑が残っている。
イメージ 3
 
観察してみると、葉が完全に枯れている個体からかなり緑の残っている個体までさまざまだった。もしこの木に夏の間中水をやり続けたらどうなるだろうか?おそらく葉は緑のままではないか?枯れた葉をいさぎよく落とさないところを見ても、ほんとうは葉をつけたままでいたいのではないかと思われる。年中湿潤な場所にいた常緑性の祖先から、夏少雨という環境で夏期落葉性へと進化したのではないかと思われる。
ラベル:生物学
posted by なまはんか at 10:23| Comment(0) | カリフォルニアの植生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月29日

砂漠

シエラネバダの東側内陸部は、グレートベースンと呼ばれる広大な盆地になっている。中にはホワイトマウンテンズのような4000m以上の山もあるのだが、集水域を考えるとグレートベースンの中心部には標高マイナス86m(-282feet)のデスバレーがあるので、グレートベースンの中に降ってきた降水は、地表水(川の流れ)としては海へ出ることはない。植生は、ホワイトマウンテンズのような高山を除けば、砂漠である。
 
これは日系人の強制収容所があったManzanarからシエラネバダの東斜面を見たところ。手前は収容所内でなくなった人々の墓地である。ホイットニー山の北東20km。ここはインヨーマウンテンズ(北にあるホワイトマウンテンズと連続した山地を形成)との間の南北に細長いOwens Valleyという平坦な谷になっていて、乾燥地が南のモハーベ砂漠へと連続している。イメージ 1
 
シエラネバダ南端の南東には広大なモハーベ砂漠が広がる。その植生を特徴付けるのが、U2のアルバムの名前になったJoshua tree (Yucca brevifolia)。Owens Lakeより南に出現する。
イメージ 2
 
背後の山がシエラネバダの南端部(Mojaveの北)。
イメージ 3
なお、デスバレーはインヨーマウンテンズからさらに内陸側(南東)、モハーベ砂漠の北側に位置する。今回の旅行中、カリフォルニア南部内陸部の町では日最高気温が華氏100度を超えていた。車がオーバーヒートする危険があるため、さらに気温が高いと予想されるデスバレーに行くのは断念した。
ラベル:生物学
posted by なまはんか at 12:36| Comment(0) | カリフォルニアの植生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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