アメリカは白人が多数派の国だが、ヒスパニック・黒人・アジア人もそれなりにいる。ボストンはカリフォルニアやニューヨークほどではないがアジア人(特に中国人)が多く、アジア人だからといって目立つことはないので住みやすい。アメリカはかつて人種差別が公然と行われていた国であり、その反省から意識的に少数派の人種への配慮が至る所で見られる。
たとえば、テレビ。私がよく見るのはNECNというニューイングランド地方のローカルニュース主体のチャンネルだが、おもな女性キャスターは3人いて、白人・黒人・アジア人である。アジア人はクリスティー・リーさんという名前で、7歳の時に韓国から移住してきた人である。
子ども向けのアニメ番組を見ても、白人・黒人・アジア人とわかる子どもが出てくる。特に驚いたのは片腕のない子どもが主要登場人物の番組があったこと。やはり、人権意識ということでは、アメリカは進んでいる。ただ、宗教的な背景があるせいか、日本よりも同性愛者に対する差別は根強いようだが・・・。
ニューヨーク、タイムズスクエアで見たアニメDoraの看板。人気のあるキャラクターで、服やオモチャにもよく採用されている。カリフォルニア旅行でお世話になったIさんの娘さんが好きだそうだ。私はオランダに行ったときにまさにこのNickelodeonのチャンネル(Nick Jr)で見かけたことがあったが、オランダ語吹き替えで内容が理解できなかった。肌の色が黒っぽいので気になっていた。Iさんに聞くとDoraはバイリンガルのヒスパニックという設定だそうだ。現代アメリカ社会を反映するキャラクターだったとは・・・。

子どもへのおみやげとして買ったTシャツ。左からヒスパニック・アジア人・白人・黒人のように見える。

8月に子ども博物館の劇場に子どもを連れて行った。出し物は「3匹の小ブタ」で、オオカミと小ブタ役を観客から選んだ。観客のほとんどは白人だが、舞台に上げた子どもは白人2人に黒人とアジア人1人ずつ。「舞台に上がりたい人手を挙げて」と言われて、まず黒人と白人の子どもが選ばれた。次はアジア人だろうから、うちの息子も可能性があると思っていたら、運よく選ばれた。傘(最後に残った煉瓦の家のつもり)の下の3人が小ブタ役で、その左のちょっと大きい子がオオカミ役。

英語で白人をwhite(またはCaucasian)、黒人をblack(またはAfrican)と言うが、黄色人種yellowとは普通言わない。アジア系アメリカ人が自分のことをバナナ(yellow outside, white inside)と呼ぶことはあるが(白人が言うと差別と受け取られるだろう)。モンゴロイドのことはふつうAsianという。昔はOrientalと言ったが、差別的だと考えられるようになり、今ではこの語は使われない。ただし、アジアといってもインド以西はコーカソイドなので、あまり適切ではないような気がする。東アジアの日本人・韓国人(朝鮮人)・中国人などは外見では(遺伝的にも)ほとんど区別できないので、East Asianと総称されることもまれにある。
白人をCaucasianと呼ぶのは、アメリカ英語のようだ。生物学的なコーカソイドは、ヨーロッパ人(いわゆる白人)だけでなく、北アフリカ人・中近東人・インド人も含む。これらのヨーロッパ人でないコーカソイドを総称するアメリカ英語の単語は存在しないようだ。ヨーロッパ人でないコーカソイド・黒人・モンゴロイド(いわゆるアジア人)など非白人を総称して、People of color(単数形はperson of color)と言う。この表現はアメリカで政治的に正しい言葉と考えられている。ただ、南アフリカの人種隔離政策(アパルトヘイト)で使われたColoredと似た言葉ではある。日本語にあえて訳すと両方「有色人種」ということになって区別できない。日本人も当然、「有色人種」ということになる。正確には南アフリカでは、東アジア人はColoredではなく「その他のアジア人(Other Asian)」とされ、そのうち日本人・台湾人は「名誉白人(honorary white)」とされていたが。
ラベル:北アメリカ