大学に植えられている奄美諸島産カエデ2種が現在開花中。カエデは性表現が複雑なことが知られる。
まず、クスノハカエデ(Acer oblongum var. itoanum)。沖永良部島以南、台湾までの石灰岩地に生える。なんと常緑のカエデ。東南アジア熱帯に分布するAcer laurinumによく似ている。与論島の実習に行った学生が苗木を持ち帰って植えたものだという。

花序は花時には上向き。種子が実るころには垂れ下がる。。「日本の野生植物」によると雄性同株(1つの株に雄花と両性花がつく)で、そこに載っている写真を見ると、花序ごとにまとまって雄花と両性花がつくようだ。先が2裂した柱頭が白く見えるので、これは両性花序。

こちらは、奄美大島と徳之島だけに分布するシマウリカエデ(Acer insulare)。落葉性で、ヤクシマオナガカエデやウリハダカエデに似た雰囲気(同じウリカエデ節とされる)。

本種では花の時から花序が垂れ下がる。「日本の野生植物」には雌雄異株と書いてある。2個体植えられているが、先が2つに割れて先端が反りかえった花柱があるので、両方とも雌株のようだ。雄蕊に見えるものは、機能していない「退化雄蕊」らしい。

あと1種、アマミカジカエデという最近新種として記載された超希少種も植えられている。奄美大島の1か所に数個体が生育するのみ。大学に植えられているのは、堀田満名誉教授が現地で採集した種子から育てたもの。落葉樹で新芽は赤い。植えた場所が悪いのかなかなか大きくならない。なので、花実は未見。

後記(2014年3月28日):2013年から開花し始め、2014年にはかなり立派な花をつけた。https://vegetation.seesaa.net/article/a16243253.html
残念なことに大学にある3本のクスノハカエデすべてにはテッポウムシが入っている。園芸業者に2週間ほど前駆除してもらったが、一番被害がひどかった木ではまだ生き残っているようで、穴から新鮮な木屑が出ていた。テッポウムシ用の殺虫剤が市販されているようなので、自分でも処置してみようかと思っている。灰色の部分は、テッポウムシに食われた部分を園芸業者が取り除いた跡で、接ぎ蝋のようなものが塗ってある。私は園芸に関しては素人なので判断しかねるが、ずいぶんな荒療治である。この灰色の部分は幹を一周しているように見えるので、もしそうだとすると維管束が切断されていることになり、枯死するのではないかと心配している。

ラベル:生物学
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