カリフォルニアの大地形に対応した植生の移り変わりを、セントラルバレーからシエラネバダへと車で走りながら見てみよう。
旅の出発地はフレズノ(標高102m、平均気温17.4℃、年降水量269mm)。シエラネバダへの玄関口である。空港で車を借りてそのまま市内で一泊し、次の日朝早くに出かけよう。ハイウェイに乗ってセコイア国立公園を目指す。広大なセントラルバレーには農地が広がる。はるか前方に朝靄がかかったシエラネバダが見える。

いよいよ山道にさしかかる。谷底には果樹園、丘陵地にはまばらなウッドランド(サバンナ)が広がる。

しばらく行くと山の斜面のウッドランドは、木の密度が増えて地面が見えなくなる。

山裾のウッドランド(Foothill woodland)の優占種は常緑カシのInterior live oak (Quercus wislizeni)。

平らな葉の裏には光沢があり、ほとんどの葉に鋸歯がある。

やがてポンデローサマツ(Pinus ponderosa)が出現し始め(斜面奥の針葉樹)、だんだんウッドランドというよりも森林と呼ぶほうがふさわしくなってくる。手前のこんもりした樹冠はカシだが、さっきまでとは種が入れ替わっている(後述)。
みるみる針葉樹が増える。

中標高(1000~2000m)の山地針葉樹林(Mid-elevation coniferous forest)で針葉樹と混交するカシ2種。左は常緑性のCanyon live oak (Quercus chrysolepis)、右は落葉性のCalifornia Black Oak (Quercus kelloggii)。常緑性のカシは似た種がたくさんあるので同定が難しい。Canyon live oakは葉の裏に光沢がなく、個体内で葉に鋸歯があったりなかったりするのが特徴。他方、落葉性のカシ(というかナラと呼ぶべきか・・・)はカリフォルニアではすべて多少ともカシワのように切れ込んだ葉をもつ。その中でもCalifornia Black Oak は、ところどころに針状の鋸歯があるので、同定が容易。

Canyon live oak (Quercus chrysolepis)の拡大写真(ただし、これはヨセミテバレーのもの)。

冬には雪が積もるらしい。右手前の若葉が赤い落葉広葉樹は、California Black Oak。前の写真より標高が高いのでまだ展葉の途中。

しばらく行くと完全に針葉樹林になる。もう5月末だが、雪が残っていた。このように雲がかかると、いかにも山地針葉樹林という感じがする。

ポンデローサマツとホワイトファー(Abies concolor)が中標高山地針葉樹林の優占種。向こうの雲の中にそびえるのはキングスキャニオンの山々。木の間隔が開いているのは山火事で焼けたせい。立ち枯れた木もある。最寄りの気象観測点(Grant Grove、標高2011m)によると、年平均気温は7.8℃、年降水量は1087mm。

山地針葉樹林のなかでも、ジャイアントセコイア(Sequoiadendron giganteum)が生えているのはごく一部。赤い幹の木がそれ。ここはその名もGiant Forestという地名(標高1955m、年降水量1099mm、気温データなし)。

ラベル:生物学
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