2011年02月20日

クスノキ

クスノキは社寺林などに多く植えられ、日本の文化に深く結びついた樹木である。しかし、クスノキが古来日本に自生したものがどうかははっきりしない。平凡社『日本の野生植物』でも「日本では本州・四国・九州の暖地に見られるが、これが野生かどうかはわからない。」とある。
 
飛鳥時代(仏教が伝来した西暦552年から平城遷都の710年まで)に作られた木彫仏像はすべてクスノキ製である(小原二郎『日本人と木の文化』)。ただし、平安時代以降はヒノキが主流となる。
 
江戸時代にはクスノキから生産される樟脳が、日本からオランダへの輸出品として銅についで重要であった。1821年10月17日、出島オランダ商館長ブロムホフは日記に以下のように記しているという(西和夫『長崎出島オランダ異国事情』角川叢書)。
日本から輸出する樟脳の風袋引き(重量計算)を行い、(長崎の町にある)薩摩藩の倉庫から一番船に183樽、二番船に112樽の樟脳を積み込んだ。
樟脳(ドイツ語でcamphre、英語でcamphor)は医薬品・香料・防虫剤として用いられるらしいが、オランダに輸出された樟脳は何に使われたのだろうか?医薬品としては強心剤として使われたこともあったそうで、「カンフル剤」という言葉がその名残だという。クスノキの学名はCinnamomum camphora、英名はcamphor treeである。
明治時代になってセルロイドが発明されると、その原料として需要が高まり、1903年から専売公社による樟脳専売制度が日本全土に施行されることになる。日本の植民地であった台湾にはクスノキのプランテーションがあったという。
 
日本の巨樹の多くもクスノキが占める。環境省の主幹の周囲長を基準にした巨樹調査では上位20位のうち、14本がクスノキである(残りはカツラが3本、スギが2本、イチョウが1本)。一位は鹿児島県姶良市(旧蒲生町)の蒲生八幡神社のクスノキである(主幹周囲24.2m、樹高30m、下の写真は1999年に撮影したもの)。http://www.kyoju.jp/data/
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ラベル:生物学
posted by なまはんか at 11:26| 日本の(で見た)植物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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