カリフォルニア旅行で一番面白かった場所のひとつが、北部海岸Fort Bragg付近のJug Handle State ParkのEcological Staircase=「生態学的階段」です。3段の海岸段丘があり、海岸から奥の段に行くに従い、約10万年ずつ土壌が老化していきます。30万年が経過した3段目では、表層土壌から栄養塩が溶脱し、しかもその下にhardpanと呼ばれる硬い不透水層ができているため、樹木の根が土壌深くの栄養塩を利用することができず、極端な貧栄養条件となっています。そのため、樹木の成長が抑制され、pygmy forestと呼ばれる貧弱な森林が成立しているのです。

1段目です。Bishop pine(Pinus muricata)が優占します。Grand fir (Abies grandis)、Sitka spruce (Picea sitchensis)、Western hemlock (Tsuga heterophylla)、Douglas fir (Pseudotsuga menziesii)も混交します。Piceaがあるのは意外ですが、カリフォルニアではちょうどこのあたりがPiceaの南限のようです(なぜかシエラネバダにはない;ロッキー山脈やアパラチア山脈ではもっと南まで分布していて、メキシコの山地にもあるらしい)。北カリフォルニア海岸部は沿岸を流れる寒流の影響で結構寒いです。霧が多いらしいです。日本でいうと釧路とか三陸がちょっとそういう感じかもしれません。海岸山地を越えて内陸部に行くとrain (fog?) shadowになり、乾燥して気温も上がります。

2段目です。Redwood (Sequoia sempervirens)が出現します。レッドウッドは潮風に弱いため、あまり海岸に近いところには生えられないようです。

いよいよ3段目のpygmy forestです。優占種は、1~2段目と同じBishop pineなのですが、貧栄養土壌のため矮性化しています。高い木は、たまたまhardpanを突き破って根を伸ばすことができた個体だと言われています。その他の優占種は、Bolander pine (Pinus contorta subsp. bolanderi)とPygmy cypress(Cupressus goveniana subsp. pigmaea)です。1段目から合計すると、自生の針葉樹が合計8種もありました!

pygmy forestの表層土壌は栄養塩が溶脱したため白くなっており、ポドゾル化しています。白い層の下の赤っぽい部分が石のように硬くなったhardpanの層です。

ラベル:生物学
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