北緯41~42度にかけてのカリフォルニア州北端部には蛇紋岩が広く分布する。今回この地域を旅行し、湿潤気候における蛇紋岩植生を観察することができた。5月には、クリアレイク周辺(北緯38~39度)で蛇紋岩植生を見たが、気候が乾燥しているためチャパラルまたはウッドランドになっていた。https://vegetation.seesaa.net/article/a805884.html
これはCrescent CityからGasquetに向けて、Interstate Highway 199でSmith River沿いをさかのぼったところ。標高約300feet。渓谷に青い蛇紋岩がむき出しになっている。蛇紋岩でなければ、こういう場所の川沿いにはレッドウッドが生えるのだが、ここでは谷底までダグラスファーが優占。斜面崩壊地や法面には、ジェフリーマツが出現する。
Gasquetを通り過ぎて3.5マイルほど行くと、蛇紋岩でできた河岸段丘に小さな湿地がある。標高約400フィート。高木はダグラスファー、ジェフリーマツのほか、互いによく似たIncense cederとPort Orford cederがあった。湿地を埋め尽くしているのは、サラセニア科の食虫植物California pitcher plant (Darlingtonia californica)。マレーシア、キナバル山の蛇紋岩地にウツボカズラが出現するのと類似の現象。
続いて、EurekaからState Highway299で海岸山地に入ったところ。Horse Mountainという標高5000フィートほどの蛇紋岩の山がある。下の写真はその東斜面約1000フィート。Salyerという集落からFriday Ridge Roadを山頂に向けて登り始めたところ。山火事跡の蛇紋岩地にGray pineが生えていた。ほぼ北限にあたる。
これがHorse Mountainの頂上。標高約4700feet。ジェフリーマツの疎林になっている。Incense cederも混じる。下層の匍匐低木はHuckleberry oak (Quercus vaccinifolia)。アンテナの横にはヘリパッドがある。キナバルのヘリパッド(標高3100mの蛇紋岩地で、やはり疎林になっている)を思い起こさせる光景。
同じ標高でも、蛇紋岩ではない地質ではダグラスファーが優占し、樹高もずっと高くなる。White fir(Abies concolor)も混交する。
ジェフリーマツは、シエラネバダなど蛇紋岩以外の地質では、標高5000フィート以上の山地に出現する。しかし、北カリフォルニアの蛇紋岩地では標高200フィートまで下降し、蛇紋岩植生の指標種となっている。
ラベル:生物学