ブナ科コナラ属Quercusとマテバシイ属Lithocarpusの果実を「どんぐり」acornという。動物の食料として重要だし、日本の縄文人やネイティブアメリカンなど狩猟採集生活を営む人類にとっても重要な食料であった。
今回3種のどんぐりを見た。日本では、コナラ属のうち常緑性のものをカシと呼び、落葉性のものをナラと呼ぶ。そして、カシの殻斗(どんぐりの「帽子」)はおわんを何枚も重ねたような横じま模様なのに対し、ナラの殻斗は鱗状の突起で覆われている。ただし、ウバメガシだけは例外で、常緑なのに殻斗の表面は鱗状である。殻斗が横じまになっているのはアジア固有のグループで、Cyclobalanops属として区別されることもある。カリフォルニアのコナラ属にも常緑と落葉があるが、Cyclobalanopsは存在しない(つまり、横じま殻斗の種は存在しない)。また、中国には落葉性のCyclobalanopsもあったように記憶する(Flora of Chinaによるとすべて常緑のようです:http://www.efloras.org/florataxon.aspx?flora_id=2&taxon_id=108828)。なので、日本で属内の分類と常緑・落葉性の対応がよいのは偶然で、必然的な意味はないと思われる。
まず、常緑のInterior live oak (Quercus wislizeni)。フレズノからヨセミテに向かう途中のウッドランドにて。葉の裏が緑色で光沢がある。鋸歯はあったりなかったりだが、この写真ではたまたますべてに鋸歯がある。

これも常緑のCanyon live oak (Quercus chrysolepis)。ヨセミテバレーにて。上種に似るが、葉の裏が白っぽく光沢がない。本種も鋸歯はあったりなかったり。殻斗に毛が生えて、ふさふさしている。

最後に、落葉性のCalifornia black oak(Quercus kelloggii)。これもヨセミテバレー。葉が大きく切れ込み、裂片の先に数本針状のトゲがある。

なお、ウイスキーなどを熟成させる樽の原木であるオーク(oak)もコナラ属樹木のことだが、ふつうは落葉性の種なので、それをカシと訳すのはほんとうは誤りということになる。
ラベル:生物学