谷部広葉樹林=Cove hardwood forestのcoveというのは、日本のイルカ漁を批判するドキュメンタリー映画の題名では、「入り江」という意味だったが、ここでは、「山中の窪地」を表す。日本でも海岸と山地の地形を現すのに同じ言葉を使うことがある。下はChimny tops頂上(標高1400m)からの光景。谷に沿って黄緑色の谷部広葉樹林が分布し、それより斜面上側の森林とはっきり区別できる。左斜面の枯れ木はHemlock。

Cove forestを特徴づけるのは、なんといってもモクレン科のユリノキ=Tuliptree=Yellow poplar (Liriodendron tulipifera)。下の写真は、上の写真で見えている場所(Chimneys picnic area、左に突き出ているcove forestの谷のうち、下から2番目)で、ピクニック用に整備された林分だが、ユリノキがほぼ純林をなす。標高2750feet=840m。

これはOconauftee River Trail (標高610m = 2000feet)沿いのcove forest(たぶん二次林)に生育するユリノキ(右)とプラタナス(左、sycamore、Platanus occydentalis)。ほかにモミジバフウ(sweetgum、Liquidamber styracifolia)もこういう場所に生える。日本でもおなじみの街路樹の野生の姿が見れて興味深かった。

後記:加藤則芳「メインの森をめざして」(102ページ)によると、グレートスモーキーの南西Joyce Kilmer Memorial Wood に巨木林があるという。「直径2メートルを超すメイプルやユリノキ、アメリカスズカケなど」という記述から判断してcove forestである。今度機会があれば行ってみたい。
ラベル:生物学
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