イングランド南部の石灰岩地(アルカリ性土壌)の発達した森林では、高木層でヨーロッパブナが優占することが多い。
林床では、しばしばDog's mercury (Mercularis perennis)が優占する。日本のヤマアイと同属。
トウダイグサ科の多年生草本である。ヤマアイ属はすべて雌雄異株のようだ(日本の野生植物)。
やはり石灰岩地に分布が限定されるツゲと一緒にブナ林に生えている様子はこちら。
http://blogs.yahoo.co.jp/ /13649067.html
こちらは未固結石灰岩(チョーク)上のハシバミの萌芽再生林。林床にヤマアイが群生している。中央の低木はやはり石灰岩植物のツゲ。Princes of Risboroughにて。
メス個体。 写真をとったのは7月。もう花はほとんど終わっていたため、オス個体は見かけなかった。
雌花。3数性なのが、トウダイグサ科っぽい。
ヤマアイ属はユーラシアに分布し、ヨーロッパに種が多い。日本を含むアジアにはヤマアイ1種が分布する。日本でも石灰岩地に多いらしい。
Dog's mercuryのmercuryは水銀だが、学名からきたのか、学名が後付けなのかわからない。
この植物が毒を持つことと関係していそうだが、Wikipeidaには人名(イタリア人のGirolamo Mercuriale)にちなんだ学名と書いてある。
図鑑を見ると日本のヤマアイは染料につかわれたことは書いてあっても、有毒であるとは書かれていない。
dogは"false" or "bad"を意味するらしい。日本語のイヌと同義であるが、偶然なのかどうか。
『新明解国語辞典』では、造語成分としての「イヌ―」には以下のような意味だと説明されている。
役に立つ植物の何かに形態上は似ているが、多くは人間生活に直接有用ではないものであることを表す。にせ。「―タデ」
このような「イヌ―」の用例は日本古来からあるのだろうか。それとも英語のdogの翻訳であり、明治以降に新たに作られた表現なのだろうか?
『例解古語辞典』には以下のような説明がある。
「いぬ」には接頭語としての用法もある。似て非なるものの意味を表す。植物名によくみられる「犬桜」「犬槙」「犬黄楊」「犬蓼」「犬辛夷(こぶし)」の類はこれである。
ネット上では「否(いな)」に由来するとの説明が多いが、誤りだろう。
ラベル:ヨーロッパ
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