ロンドンの南にあって東西に伸びる丘陵地帯ノースダウンは、未固結の石灰岩(チョーク、白亜)でできている。その東端に位置する町がドーバーである。ノースダウンの丘陵がそのまま海岸に達しているので、海岸はチョークの白い崖になっている。英語ではその名もホワイトクリフ(White Cliffs)という。複数形なのは、崖が何kmにもわたって連続していて、部分ごとに異なる名前がついているためである。
ドーバーの西にある高台(Western Heights)の上から東を見たころ。ドーバーの町の向こうの高台の上にドーバー城がある。その右(南)側に白い崖(Eastern Cliff)があり、その下にドーバー海峡連絡船の港がある。トンネルができた現在でもカーフェリーは繁盛しているようだ。

港の内陸側にちょっとだけ住宅街がある。そこからEastern Cliffを見上げたところ。写っている建物はレンガでできているが、駐車場の壁の一部にチョークから取れるフリント(チョークの形成過程にできるケイ素に富む岩石、火打石)が使われている。崖の中腹に窓があるが、おそらくドーバー城の地下にある二次大戦中の英軍司令部トンネルの一部だと思う(時間がなくて見学できず)。崖の上にある展望台は、やはりドーバー城の敷地内にあるAdmiralty Look-out。

そのAdmiralty Look-outからさらに東を見たところ。手前にEastern Cliffの崖があり、一番向こうにLangdon Cliffsが見える。Langdon Cliffsはナショナルトラストの所有地でビジターセンターがあり、観光客が多く訪れる。

そのLangdon Cliffsの上まで来たところ。崖の上に芥子粒のように人が見える。

崖をよく見ると地層の横縞が見える。黒っぽい線状の部分はフリントが混じっている部分。

白いチョークに黒いフリントが混じるようす。

チョークは柔らかくて建築材にはなりえない。緑色の部分にはコケ(または藻類?)が生えている。

ダウンランド(地質がチョークの地域)の建物でよくあるように、ドーバー城にもフリントが使われている。古い建物ほどフリントの割合が多い。新しい建物ではほかの石材やレンガも使われている。下の写真は日本の城の天守閣に相当するGreat Tower。改修されているのでフリントの割合はそんなに高くないが、最上部はほぼフリントだけでできている。

Great Towerの壁の一部を拡大したところ。辞書によるとkeepは「天守閣」とのことなので、Great Towerと同義なのでしょうね。ここではフリントは大きな石の間を埋めるようにして使われている。

古い門では主要な石材のひとつとしてフリント(全体は黒っぽくて角が白い)が使われていた。

この日は視界がよく、高台からフランスが見えた。

ラベル:ヨーロッパ
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