2012年10月22日

チルターン丘陵の地質と地形

ロンドンの北西にあって南西~北東方向の帯状に伸びるチルターン丘陵の地質は、未固結の石灰岩(チョーク、白亜)である。白亜紀に堆積したときには地層は水平だったが、その後ロンドン平野が沈降したため、現在はロンドンに近い南東側が低くなるように傾いている。その地層の傾きを反映して、チルターン丘陵はロンドンに向かって緩やかに低くなっている(dip slope)。逆にロンドンと反対のAylesbury側は急斜面(scarp slope)をなして終わっていて、その急斜面の上が丘陵で一番高くなっている。
 
そのような場所のひとつIrving Beacon(標高233m)。一番奥に見える丘です。右(南東)側にチルターン丘陵が続いている。左(北西)側の平野はAylesbury Vale(谷という意味です、標高70~100m)。
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上の写真を見ると、Irving Beaconの右側に森で覆われた平坦面がある。このような丘陵の上の平坦面はチルターンのいたるところで見られ、その面上にはチョークの上に粘土分に富む黒っぽい堆積物が載っている。フリントの粒が混じっているのでclay-with-flintと呼ばれている。そういう場所の歩道は水はけが悪くびちゃびちゃしていることが多い。clay-with-flintのフリントはチョークに由来する。clay-with-flintの成因については、平坦面でチョークが風化・溶脱を受けた結果だという説(R. Forty, The hidden landscape)のほか、堆積物に外来性のものがあることから氷期にチルターンまで到達した大陸氷河によって供給されたという説(Wikipedia)もある。イギリス首相の別荘地Chequers Houseの敷地のすぐ外側にて(標高200m)。敷地内の別荘の前にヘリコプターがとまっていたのがいかにもだった。イメージ 8
 
チルターンの最高地点(267m)はWendoverの北東にあり、Aylesburyの町に落ち込む急斜面の上の平坦面にあり、平らな丘の上は森林に覆われ眺望はまったくない。いちおう山頂(Chiltern Summit)を示す石碑が建っている。
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Wendoverの北にあるHaltonという集落(parich、行政教区)の地図。集落は丘陵のふもとにあり、ふもとの平野(地図の左上部分、標高110~130m)には牧場や畑が広がる。丘陵の上(右下部分、チルターンの最高点を含む)は薪などを採取する里山として利用された。このように地形に対応した土地利用をし、集落の範囲もそのような土地利用を反映して決定されていたため、細長い形(strip parish)になっている。
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丘陵上の平坦面以外はチョークが地質の一番表層にある。Wendoverの町外れの畑(標高160m)。白く見えているのがチョークの固まり。
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近づいてみるとこんな感じ。校庭に白い線を引く石灰の固まりのような感じ。
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サウス・ダウンと同じようにフリント(火打石)がチョークの中に混じることもある(https://vegetation.seesaa.net/article/a14182595.html)。真っ白なチョークが崩れ落ちている斜面に黒っぽいフリントが埋まっている。Princes Risboroughの東にあるWhiteleaf Hillにて。イメージ 5
 
Princes Risboroughの北にある村Ellesboroughにはフリントでできた教会があった。
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Princes Risboroughの町の中にかつて道しるべとして使われていたという奇妙な石がある。干しぶどうが入ったプデイングに似ているのでPudding stoneという。Pudding stoneは礫岩(conglomerate)の一種で、その成因はさまざまだが、イングランドのこの地方で見られるものは、チョークから侵食されて流出したフリントが水の中でもまれて丸く磨耗した後に、ケイ素分の多いマトリックスに覆われて固まったものだそう。
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ラベル:ヨーロッパ
posted by なまはんか at 04:26| イギリスの自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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