2012年10月09日

キリマンジャロの針葉樹

キリマンジャロの山地林には2種の針葉樹が出現する。
 
南斜面にも西斜面にも出現するのが、マキ科のPodocarpus latifolius。日本のイヌマキにそっくり。
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podo = leg、carpus = fruitという名のとおり、果実(厳密には仮種皮に包まれた種子)が果托(receptacle)の上に着くようすが、果実に足が生えているよう。植物学的には果托の部分は球果が変形したものである。つまり、通常の球果ではマツかさの奥に隠れている種子の一つだけが飛び出して、球果の先にくっついた状態になっている。果実は液果で鳥によって散布される。
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英名はYellow-wood。その名のとおり材が黄色い。
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乾燥した西斜面の森林限界付近にだけ生えているのが、ヒノキ科のJuniperus procera。メル山の東斜面でも見かけた。孤立して生育すると、樹形がきれいな円錐形になる。
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Juniperusの果実もPodocarpusと同様に液果であり、種子が鳥によって散布される。ただし、植物学的には、JuniperusとPodocarpusの液果の構造は異なっていて、Juniperusの液果では球果の松かさが閉じたまま(種子を内部に含んだ状態のまま)融合し、全体が柔らかくなったものである。同じヒノキ科で枝葉の様子はそっくりでも、Cupressus(イトスギ)、Chamaecyparis(ヒノキ)などの属は通常の松ぼっくり状の乾いた球果となる。
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Juniperの英名は、African Pencil Cedar。かつて鉛筆の材料として利用されたらしい。アメリカ東部のJuniperus virginiana (Eastern Red Cedar)と同じである(https://vegetation.seesaa.net/article/a5634980.html)。
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Podocarpusはゴンドワナ大陸で進化し、東アジアでは日本南部にまで進出した。一方、Juniperusはローレシア大陸で進化し、南半球にまで進出しているのはアフリカだけである。キリマンジャロでは、西斜面でPodocarpusとJuniperusが共存するが、このようにゴンドワナ起源の針葉樹とローレシア起源の針葉樹が共存しているのは世界的にも珍しい。たとえば、屋久島ではローレシア起源の針葉樹(スギ・モミ・ツガ)は高標高に出現して針葉樹林の優占種となるが、ゴンドワナ起源の針葉樹(イヌマキ・ナギ)は低標高の照葉樹林の構成種となり、両者が同じ森林で共存することはない。
ラベル:アフリカ
posted by なまはんか at 19:47| タンザニア(キリマンジャロほか) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする