2012年07月17日

石灰岩地に生える植物

イギリスで石灰岩地に分布が限られる樹木にツゲ(Buxus sempervirens, box tree, ツゲ科)がある。
成長が遅くて材の比重が重いため、用材として重宝されたのもイギリスと日本で共通している。イギリスでは自生地は3か所の石灰岩地だけで、おそらくほかの場所では切りつくされてしまったのだろう。
 
チルターン丘陵にも自生地があるので見に行った。大きな個体が多数見られるのは、谷沿いの急斜面である(Ellesborough Warren)。高木がまばらな二次林で、ツゲはほとんど被陰されない状態で生えていた。多くの個体は根元から複数の幹が出る「株立ち」になっていて、直径20cm、樹高10mぐらいの幹もあった。同じ根元から出ている幹は同じぐらいの太さがそろっているのが多い。この場所では幹は垂直に伸びているものが多く根元のほうには枝がないので根際が見えた。
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少し離れた場所の、鬱閉した林冠を持つ発達した二次林では、ツゲが林床に点々と生えている様子が観察できた(Little Kimble Warren)。こちらのほうが原生状態での生育の仕方に近いのではないかと思われた。点々といっても、一つ一つの「点」は横幅数mの藪になっている。藪の中には背丈より高く伸びている枝先もあるのだが、腰あたりよりも下は枝が地面までびっしりついていて、内部が見えない庭木のツツジのようになっている。このように、暗い林床では樹形がまったく異なっていた。根元の様子が見えないので、どのようにしてこのような横長の藪を作っているのか不明である。枝が這っているだけなのか、伏条更新しているのか、根から萌芽しているのか、単に集中分布しているのか。観察したところ、枝が地面に這うように伸びているのと、稚樹が藪のすぐ外側に生えているのは観察できた。なので、枝が這うことと、何個体もがまとまって生えることは、藪の形成原因として有力である。稚樹が藪のすぐ外側にだけ生える理由としてはシカの食害が考えられるが、食痕には気づかなかった。
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 ツゲの手前の地面をびっしり覆っている草本はDog's mercury(トウダイグサ科ヤマアイ属)。イングランドの石灰岩地を特徴づける種で、ブナ林の下層に生えることが多い。http://blogs.yahoo.co.jp/aibaboston/16244597.html
 
以上のチルターンの自生地の地名には、ほかの場所ならWoodとかHillとかつくところにWarrenという単語がついている。Wikipediaによると、Warrenとは、a place where rabbits breed and live, thus a network of underground interconnecting rabbit burrowsだそうな。昔はウサギの住んでいるような草地だったのだろうか。しかし、そんな場所にツゲが生えていたとも思えない。
 
日本のツゲとは別種だが、見かけはそっくりである。
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ツゲは日本でも石灰岩地に生えることがある。九州にそのような場所で天然記念物になっている場所があるようだ(福岡県朝倉市古処山)。屋久島では標高1300mより高いヤクスギ林の林床に生えている。屋久島ではあまり株立ちしないし、大きい個体は比較的垂直方向に伸びて、地面に這うように生えることはない。
ラベル:生物学
posted by なまはんか at 04:32| イギリスの自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする