2012年07月13日

スコットランドの気候

スコットランドでは、偏西風に対応した降水量のパターンがある。大西洋上から吹き付ける偏西風がスコットランドの山並みにぶつかり降水をもたらす。このため西岸の方が東岸より降水量が多く、特に西岸に近い山地(ベンネビスなど)で多くなる。
 
たとえば、スコットランド南部低地地方(北緯56度)の年降水量は以下のようである。
西海岸のキルマーノック(Kilmarnock, グラスゴーの南西、標高97m):1105mm
西岸山地のカトリン湖(Loch Katrine, グラスゴーの北、標高244m):2068mm
東海岸のエジンバラ(標高41m):665mm
 
スコットランド北部のハイランド地方(北緯57度)では以下のとおり。
西海岸の沖にあるタイリー島(Tiree, フォートウィリアムの西、標高12m):1145mm
西海岸のフォートウィリアム(標高20m):1935mm
西岸山地のベンネビス山頂(標高1344m):4082mm
東岸山地のブレイマー(Braemar, 標高339m):899mm
東海岸のアバディーン(標高65m):755mm
 
以上のように西海岸はけっこう雨が多い。特にベンネビスの山頂の4000mm以上というのはすごい。1883–1904年に頂上に気象観測所があって気象を観測していた。そのときにとられたデータ。今でも廃墟が残っている。1914年6月20日に日本の登山家辻村伊助が登った時には、この観測所と一続きの隣に有人小屋があった。値段が高いのに驚きながら6ペンス払って紅茶を飲んだという(「ハイランド」平凡社ライブラリー)。別の箇所にスコットランドでは夕食には1シリングで充分との記述がある。1970年までは、12ペンス=1シリングで、20シリング=1ポンドだった。現在はシリングは廃止され、100ペンス=1ポンドとなっている。
イメージ 1
 
スコットランド西部に原生林がもしあったなら、北米西海岸(アラスカ~オレゴン)と同じような「温帯多雨林」になっていただろう。ただし、高木性針葉樹はヨーロッパアカマツだけなので、北米とはちがって落葉広葉樹のナラが優占する林になるが。
 
ハイランド地方にはベンネビスやケアンゴーム(Cairngorm)山地など1000mを超える山々がある。海岸部のアバディーン(標高65m、年平均気温7.9度)の月平均気温は以下のとおり。暖かさの指数を計算すると39.7となる。
JanFebMarAprMayJunJulAugSepOctNovDec
3.23.44.56.38.811.813.613.411.58.75.63.9
 
アバディーンからディー川(River Dee)沿いにブレイマー(標高339m、年平均気温6.3度)に上がると以下のようになり、暖かさの指数は30.7である。
JanFebMarAprMayJunJulAugSepOctNovDec
11.22.44.9811.312.712.29.96.63.31.7
 
ハイランド最高峰のベンネビス(標高1344m、年平気気温マイナス0.3度)だとこうなる。暖かさの指数は0.1しかない。

JanFebMarAprMayJunJulAugSepOctNovDec
-4.4 -4.6 -4.5 -2.4 0.5 4.4 5.1 4.6 3.4 -0.4 -1.7 -3.8

 
森林限界に対応するのは、ケッペンの気候区分では最暖月平均気温10度、暖かさの指数では15である。ブレマーはまだ気候的な森林限界より下だが、ベンネビスの頂上は森林限界を大きく超えている。ハイランドの山々は確かに森林限界を超えている。
ラベル:ヨーロッパ
posted by なまはんか at 02:12| イギリスの自然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする