2012年07月01日

ロンドンの水

イギリスでは、民間の会社が水道水を供給しているらしい。ロンドン(テムズ川流域)では、Thames Water Utiliitesという会社である。この会社はなんと900万人に水を供給しているらしい。会社のホームページによると、以下のように水道水の水源のうち、35%が地下水で、65%が河川である(http://www.thameswater.co.uk/cps/rde/xchg/corp/hs.xsl/15734.htm)。しかし、河川水のほとんどは元をたどると地下水であるため、結局は地下水にほとんど依存していることになる。
 
We supply 2.6 billion litres of drinking water to nine million people across London and the Thames Valley every day. Thirty-five per cent of the water we supply is pumped from natural underground reservoirs called aquifers. The other 65 per cent is pumped from rivers. However, the vast majority of river water is supplied from aquifers, making groundwater our most important source of water. For water to reach the aquifer, the ground needs to be saturated so it soaks through to the rocks beneath. As a result, winter is the most important time for replenishing supplies
 
というわけで、ロンドンの水道水は地下水の水質を反映し、ということは地質を反映していることになる。ロンドンの水はミネラルが多い硬水である。テムズ川流域には、石灰岩が多く分布するため(後述)、特にカルシウム濃度が高い。水道水を加熱すると、溶けているカルシウムが固体として析出してくる(lime scaleという)。カルシウムがヒーターやセントラルヒーティングの管の内部にこびりつき、加熱効率が低下したりして問題になるらしい。また、人によっては美容・健康上にも問題が生じるらしい。というような説明が下の店のショーウィンドーで説明されていた。石灰岩でできたロンドン北西部の丘陵地帯Chiltern Hillsのふもと、Princes Risborough(プリンシスリスバラ)にて。
 
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ふだん生活して感じるのは、電気ポットの中にカルシウムの塊がたまること、水がかかるシンク周辺にカルシウムの粉がこびりつくこと、パスタをゆでるとなべのお湯がドロドロになること、などである。日本でも、やかんの中や水周りにカルシウムがつくことは経験していたが、スパゲティをゆでるお湯がここまでドロドロになることはなかったので驚いた。
 
地質について詳しく見るとブリテン島の南東部(ヨーク・ノッティンガム・バーミンガム・ブリストル・エクセターを結んだ線より南東側)の基盤はジュラ紀から白亜紀にかけて浅い海で形成された石灰岩である。テムズ川の河谷はその石灰岩が沈降した上にたまった未固結の堆積物で埋まっているが、その堆積物の多くも石灰岩起源である。ブリテン島のそれ以外の地域には石灰岩はほとんど分布せず、古い堆積岩やそれが変化した変成岩(スコットランドの北西部の変成岩はなんと28億年以上前に起源)からなるので、水道水もミネラルの少ない軟水のはずである。
ラベル:ヨーロッパ
posted by なまはんか at 12:16| ロンドン生活 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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