雲南省の熱帯季節性雨林のうち、南東部のMenglaにはフタバガキ科のShorea wantianshuea(=Parashorea chinensis)が優占する森林がある。最上層を占めるShorea wantianshueaの樹高は60mに達し、森林の相観はボルネオのフタバガキ林とほとんど変わらない。ただし、ボルネオだと直径2m近い木が散見されるが、この森林にはそこまで太い木は見当たらなかった。
シーサンバンナ植物園はこの森林に20ヘクタール調査区を設定している。これが調査区の内部。奥に見える大木がShorea wantianshuea。下層が鬱閉していて森林の上層は見通せない。

20ヘクタールに直径1cm以上の樹木が約10万本あり、468種が出現。直径10cm以上1ヘクタールあたりだと平均123.5種(110~139種)が出現する。ボルネオのランビル(247種)やマレー半島パソー(206種)のフタバガキ林やアマゾンのヤスニ(251種)よりは少ないが、パナマのBCI(91種)やタイのHKK(65種)にくらべると多い。
調査区の近くには観光用のキャノピー・ウォークウェイがある。中国語では「樹冠走廊」とか「空中走廊」というようだ。もともとは研究用に作ったのだが、維持費が出せなくなり観光用になってしまったらしい。ウォークウェイの入場料は100元なので相当いい値段(今回滞在したホテルが1泊120元)。Shoreaは常緑だが、その他の超出木には落葉樹もある。Tetrameles nudiflora(ダティスカ科もしくはテトレメレス科)やAntiaris toxicariana(クワ科)であろう。Tetramelesは「義務的」(obligate)な落葉樹で東南アジアのうち季節性のあるインドシナと東マレシア(ジャワ・スラウェシ・小スンダ列島・ニューギニア)に分布し、年中湿潤なボルネオ・スマトラの大部分・マレー半島南部には分布しない。一方、Anitiarisは「任意的」(facultative)な落葉樹で、雲南では落葉性だがボルネオでは常緑性である。

かなりの高度感。

Shoreaを下から見上げるこんな感じ。確かに60mあるかもしれない。中国で一番高くなる木で、中国名は「望天樹」。

こちらがshoreaの大木の葉。

こちらがShoreaの稚樹のシュート。托葉が目立つ。枝や葉の雰囲気は、ボルネオのParashoreaよりはShoreaっぽい。雲南省と広西壮族自治区、および北ベトナムに分布する。

ラベル:生物学