国際学会のエクスカーションで中国雲南省シーサンバンナの熱帯季節性多雨林を訪ねた。シーサンバンナ植物園(XTBG)から5kmの標高750m。XTBGの1ヘクタール調査区がある(55kmプロットと呼ばれていた)。熱帯季節性多雨林というのは奇妙な言葉だが、落葉樹がわずかに混じるほかは相観は熱帯多雨林と変わらない。
これが森林を外から見たところ。林縁部なので二次林ぽいが、上層に落葉樹が混じる様子がわかる。

これが林内。1ヘクタール調査区のすぐ外で、気象・ガス交換観測用のタワー(高さ70m)が立っている。写真中央上よりに三角形の物体が3つ見えるが、それらがタワーの一部。森林の上層に落葉樹があり、現在乾季のため落葉している。おそらくカンラン科のGaruga floribundaと思われる。
プロット内で一番高い木の樹高は46m。種数は1ヘクタールに120種(直径10cm以上)で、ボルネオの低地林よりやや少ない。

優占種はムクロジ科のPometia tomentosa。これはPometia pinnataとシノニム(同種異名)である。この種はスリランカ・インドシナ・台湾からマレシア(マレー半島・フィリピンからニューギニアまでの地域)全域、さらにはトンガ・サモア・フィジーなどの太平洋諸島にまで分布する。ボルネオなど西マレシアではフタバガキにくらべ個体数は多くないが、フタバガキ科が少ないニューギニアの低地やフタバガキ科を欠くソロモン諸島では優占種のひとつになる。

Pometiaは常緑樹だが、乾季にはかなり葉を落とすようで、林床には落葉が多数見られた。黄色いのがPometiaの落葉。

調査区の入口にイズセンリョウ(Maesa japonica)にそっくりな低木があった。イズセンリョウは日本・台湾・中国南部・北ベトナムに分布するので、イズセンリョウそのものかもしれない。中国にイズセンリョウ属は29種もあるので、なんともいえない。

調査区への道の途中に大きな鳥の羽根が落ちていたサイチョウだろうか?

タイでサイチョウの種子散布の研究をされているKさんに聞いたところ、「先端が白くて全体が黒い尾羽でその当たりに生息している可能性が高いのはキタカササギサイチョウAnthracoceros albirostris」とのことでした。
ラベル:生物学
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