2012年04月02日

中国雲南省の植生

中国雲南省で開かれた国際学会に出席し、森林も少しばかり観察する機会があった。雲南省は中国の一番南西部に位置し、面積は394,100㎢あり、日本(370,000㎢)よりやや広い。海には面していないものの、最低標高は紅河(ベトナム北部で海に注ぐ)沿いの76m、最高標高は梅里雪山の6740mであり、その標高差は約6700mに及ぶ。標高差による温度条件の多様さに加え、降水量もさまざまである。緯度の範囲は北緯21度から29度の間で日本のように広い範囲を占めるわけではないが、標高差と降水量の変異のため多様な気候条件が存在し、さらに石灰岩地の存在もあって、植生と植物は著しい多様性を示す。雲南省には16000種の維管束植物が存在する(日本はその半分以下の7000種)。中国の4%にすぎない面積に中国全土に存在する30000種の半分以上が存在することになる。雲南省を含むヒマラヤ山脈東部地域は、面積10,000㎢あたりの植物種数では、ニューギニア・ボルネオをしのぎ、旧世界で多様性が最も高い地域である。
 
今回私が訪れたのは、雲南省の南端に位置するシーサンバンナ・タイ族自治州であり、北緯21度から22度30分の間に位置し、西部はミャンマーと、南部はラオスと接している。州のほぼ中央を南北にメコン川(中国名瀾滄江、Lancang River)が流れ、その右岸に州都景洪Jinghongが位置する。、国際学会は、Jinghongから車で1時間ほどのメコン川の支流の岸にある中国科学院シーサンバンナ熱帯植物園で開かれた。
 
シーサンバンナの森林は以下のように分類される(Zhu 2006)。
I-1. 熱帯季節性多雨林(Tropical seasonal rain forest):標高1000m以下
I-2. 熱帯山地多雨林(Tropical montane rain forest):標高900-1800m
II. 熱帯季節性湿潤林(Tropical seasonal moist forest):標高650-1300mの石灰岩地斜面
III. モンスーン林(Monsoon forest)=熱帯落葉樹林:メコン川の川岸と盆地
IV. 熱帯山地常緑広葉樹林(tropical montane evergreen broad-leaved forest):標高1000m以上の上部斜面と1300m以上の谷
 
観察できたのは、いずれもシーサンバンナ州内の、標高600m付近の2タイプの熱帯季節性多雨林と標高1700m付近の熱帯山地林(I-2なのかIVなのか判然としなかった)である。
 
標高655m(21.42°N 101.90°) のMenglaの平均気温は以下のとおり。
   Jan  Feb  Mar  Apr  May  Jun  Jul  Aug  Sep Oct  Nov  Dec Year
°C 17.9 19.3 21.9 24.7 26.0 26.2 25.8 25.8 25.4 23.7 20.9 18.0
 22.9
 
 22.77°N 100.90°EのSimaoの降水量は以下のとおり。
   Jan  Feb  Mar  Apr  May  Jun  Jul  Aug  Sep Oct  Nov  Dec Year
mm 21.3 13.5 21.3 41.1 144.2 225.7 323.3 311.7 159.8 128.5 65.7 25.2
 1498.8
11月から3月は気温が低く、降水量も少ない。これを冬と呼んでもよいのだろうが、現地では降水量のほうを重視して乾季と呼んでいる。
 
ちなみに、沖縄の那覇(26.20°N 127.60°E.、標高28m)の気温と降水量は以下のとおり。シーサンバンナと年平均気温はほとんど同じだが、夏と冬の気温差が大きい。年降水量が多く、冬も雨が多いため一年中湿潤である。このため、沖縄では乾季ではなく冬と呼ぶ。
 
Jan  Feb  Mar  Apr  May  Jun  Jul  Aug  Sep Oct  Nov  Dec Year
°C 16.0 16.2 17.8 20.7 23.3 26.1 28.0 27.7 26.8 24.1 21.0 17.8
 22.2
mm 125.0 125.9 159.2 164.5 251.6 280.1 177.5 269.9 174.7 164.5 132.6 110.6
 2138.1
 
ラベル:生物学
posted by なまはんか at 21:47| 中国雲南省・台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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