アメリカにも方言があり、それぞれの地方特有の言い回しがある。加藤則芳「メインの森をめざして」にもそのような例がいくつか出てくる。
ギャップgapとは、一般的には隙間とか、切れ目、割れ目という意味だが、アメリカのこのあたりでは、稜線の切れ込みを意味する。要するに峠だ。アメリカでもほとんどの地域では、峠をパスpassというのだが、南部アパラチア地方では、ギャップと表現する。(38ページ)・・・ニューハンプシャー州に入って「ノッチ」という用語が増えたことにお気づきになったかと思う。これまで使っていた「ギャップ」と同義で、一般的な英語で使われる「パス(峠)」にあたる。このあたりのアパラチアン・マウンテン・クラブの管理エリアに限ってはノッチと呼ばれている。ノッチとは、V字型の切れ込みや、谷合いの細い道や切り通しなどを意味する。つまり、普通の峠というよりは、このあたりは鋭い岩山や、深く切り立った峡谷が多いために、峠道自体にそのような用語が使われているのだ。(490ページ)リーン・トゥーlean-to。初めての用語だ。これ以降、コネチカット州、マサチューセッツ州、そして最後のメイン州内のシェルター(引用者注:避難所)をリーン・トゥーと呼ぶ。同じニューイングランドでも、ヴァーモント州、ニューハンプシャー州では今までどおりシェルターと呼ぶのだが、この使い分けの理由は特に大きな意味があるわけではなさそうだ。(424ページ)
ただし、ノッチは氷食地形のU字谷で形成された峠を特に指すのではないかと思う。https://vegetation.seesaa.net/article/a12084073.html
Wikipediaによると以下のようである。http://en.wikipedia.org/wiki/Mountain_pass
In the United States, pass is very common in the West, the word gap is common in the southern Appalachians, notch in parts of New England, and saddle in northern Idaho.
地方によって峠の呼び名はいろいろなのだが、それぞれの地方の特徴的な地形に合わせて言葉も選ばれているのかもしれない。というのもニューハンプシャーであってもノッチと呼ばれないで、コル、ギャップ、パスと呼ばれる峠もあるからだ。
なお、カタカナにするとパスで同じだが、passでなくpathは、山道をさす。下の写真によると、ワシントン山頂に至るアメリカ最古のハイキングトレイルはCrawford Pathというらしい。 Wikipediaによるとpassとは、a path between two mountainsである。

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